正当な過失割合に基づく請求をすることが可能です。
交通事故の場合は、単純に被害者と加害者が分かれるわけではありません。大抵は被害者にも何らかの事故の原因があり、その過失に応じて損害賠償額は減額されます。これを過失相殺といいます。保険会社側は自分の会社の負担を少しでも減らしたいと考え、過失相殺を主張してきますので、保険会社との示談の際には、過失割合の認定で対立することが非常に多くあります。
過失割合は、基準となる過失割合に、それを修正するための要素を考慮して修正率を加算したり、減算したりして決まります。
保険会社の提示してき過失割合に疑問がある場合、話合いがまとまらない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
被害者の過失割合が否定又は減少された裁判例には以下のものがあります。
裁判年月日 | 事例 | 減額割合 |
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東京地八王子支判 H16.8.27 |
被害車はセンターラインのない道路において、道路交通法上の左側通行義務に違反し、右側を通行していたという過失はあるが、加害車運転者は、被害車が右側通行していることをかなり前方から確認しているので、加害車が被害車と接触する可能性があることを十分予測でき、かつこのような危険を回避することが可能であったにもかかわらず、被害車搭乗者に対する危険回避義務を怠った結果、本件事故を発生せしめたから、被害車搭乗者の過失を損害賠償の算定において斟酌することは相当ではないとされた事例 | 0% |
名古屋高金沢支判 H17.5.30 |
被害者(妊婦)がシートベルトを着用していなかった場合でも、妊婦については道路交通法上シートベルト装着の義務が免除されていることから、シートベルトをしていなかったことをもって過失相殺事由とすべきではないとされた事例 | 0% |
京都地判 H21.8.10 |
加害者には、脇見をして前方注視を怠ったまま進行するという過失が認められ、一方、被害者にも、歩行の際に路側帯の中ではなく車道の中に約0.5メートル入った所を歩行していた事実が認められるものの、事故現場付近の状況、本件事故態様、加害者の過失内容・程度等のほか、当時81歳であった被害者の年齢にかんがみれば、過失相殺をすべきではないとされた事例 | 0% |
また、被害者が加害者の知人・恋人・家族などで、事故当時加害車両に同乗していたというような場合に、保険会社側が「好意同乗減額」を主張してくるケースがあります。しかし、被害者がシートベルトをしていなかったり、運転者の飲酒の事実や運転能力が未熟なことなどを認識していたからといって、必ず減額されるわけではありません。具体的諸事情を考慮したうえ、好意同乗減額を認めなかった裁判例として、以下のものがあります。
裁判年月日 | 事例 | 減額割合 |
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大阪地判 S61.12.23 |
被害者は、本件事故前に運転者が飲酒しているのを見かけたにもかかわらず、運転を制止することもなくそのまま事故車に同乗したが、運転者がどの程度飲酒したかは知らず、同人の状態が普段と変わらなかったこと、本件事故の原因が、運転者が安全な速度で運転しなかったことにあり、酒気を帯びていたことが本件事故の一因をなしたものとは認められないことから、過失相殺を認めず、被害者の請求を認容した事例 | 好意同乗による減額なし |
横浜池判 H17.9.22 |
被害者はシートベルトを着用していなかったが、加害車運転者が被害者にシートベルトを着用させるのは容易であること、本件事故が加害車運転者の著しい無謀運転に起因するものであることから、過失相殺が認められなかった事例 | 好意同乗による減額なし |
なお、過失割合の認定にあたっては、被害者の過失のみならず、「被害者と身分上ないし生活上一体とみられる者の過失」が被害者側の過失として認定される場合があります。一般に、家族や内縁配偶者、会社の従業員の過失については、被害者側の過失に当たりますが、恋人や友人、会社の同僚の過失については、被害者側の過失に当たりません。被害者側の過失について、以下のような裁判例があります。
裁判年月日 | 事例 | 減額割合 |
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神戸地判 H4.12.24 |
自動二輪車と普通貨物車が衝突し、自動二輪車の後部座席に同乗していた者が死亡した事故について、自動二輪車の運転者の損害の算定においては、同人に制限速度違反・前方不注視の過失があったとして、同人の過失割合を1割5分とする過失相殺がなされたが、死亡した同乗者(運転者の交際相手)の両親側の損害の算定においては、運転者の過失を亡娘の過失としてしん酌することは相当でないとして、過失相殺を否定した事例 | 0% |
このように、過失の認定はケースバイケースなので、保険会社側の主張がもっともらしく聞こえても、具体的諸事情に照らし、過失割合が減少し、損害賠償額が増額する場合があります。少しでも疑問がある場合には、弁護士に相談することをお勧めします。