取引先が破綻してしまった場合、債権を回収するには、任意回収と強制回収の2つの方法があります。
任意回収の主な方法は、次の通りです。
相殺とは、当事者間で対立する債権を互いに持っている場合、双方の債権を同じ金額分だけ消滅させることができるという制度です。取引先が破綻してしまった場合でも、取引先に対して債権とともに債務も存する場合には、この方法により、取引先に対する債権を回収したのと同様の効果を得ることができます。
相殺をするためには、双方の債権が、次の2つの要件を満たす必要があります。
相殺適状にあるというためには、同じ種類の債権が同時に存在し、かつ、双方の債権(少なくとも相殺する側の債権)が弁済期に来ていなければなりません。
相殺禁止の特約があったり、法律によって相殺が禁止されていたりする場合は相殺できません。
また、相殺の意思表示は、正当な相手方に対して、正しい方法で行わなければなりません。弁護士に依頼すれば、上記要件の有無を調査し、より確実な方法で相殺の意思表示を行うことができます。
取引先が第三者に対して金銭債権(売掛金など)を持っている場合には、取引先からその債権を譲り受け、第三者に対して譲り受けた債権を行使することにより、債権の回収を図ることができます。
債権譲渡を第三者に対抗するには、確定日付ある証書により、取引先から第三者に対して通知する必要がありますが、弁護士に依頼すれば、内容証明郵便を送る方法で、より確実に通知を行うことができます。
所有権を留保して商品を取引先に売却している場合は、売買契約を解除し、取引先の了解を取った上で所有権に基づき商品を回収します。弁護士を利用すれば、円滑・迅速に商品の回収を行うことができます。
また、取引先の同意を取った上で、他社の製品を取引先から譲り受けることにより、代物弁済として債権の回収を図ることができます。この場合も、弁護士に依頼すれば、より確実な方法で取引先と交渉することができます。
強制回収は、裁判所を通じて債権を回収する方法であり、主なものは次の通りです。
担保権が抵当権である場合、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対し、競売の申立てを行います。申立てに際しては、抵当権設定登記の登記簿謄本が必要です。
なお、破産手続が開始されていても、担保権は別除権として、破産手続とは別に行使することができます。
金銭などの請求について、債権者の申立てにより、その主張から請求に理由があると認められる場合に、裁判所から「支払督促」を債務者に送付してもらう手続であり、債務者が2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。 しかし、債務者が異議を申し立てた場合には、「支払督促」は効力を失ってしまいます。
60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。証拠書類や証人は、審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。
しかし、相手方が審理に応じず、通常訴訟への移行を求めた場合には、通常訴訟へ移行されてしまいます。
調停は、訴訟と異なり、裁判官のほかに一般市民から選ばれた調停委員2人以上が加わった調停委員会が当事者の言い分を聴き、必要があれば事実も調べ、法律的な評価をもとに条理に基づいて歩み寄りを促し、当事者の合意によって実情に即した解決を図る手続です。
しかし、調停はあくまで話し合いですから、相手方がそもそも裁判所に出頭しなければ成立しません。
原告と被告は、法廷(裁判官の面前)で、お互いに証拠を出し合って事実上・法律上の問題を争います。裁判官は当事者双方の言い分を聞き、証拠と法律に照らして、原告の請求あるいは被告の主張のいずれかを正当とする判決を言い渡します。判決で負けてしまったときは、不服であれば「上訴」をして、上級裁判所に判断を求めることになります。
なお、裁判所からの勧告に基づき、当事者同士が妥当な解決方法を話し合う「和解」等の手続によって解決を図ることもあります。
強制執行手続は、勝訴判決を得たり、相手方との間で裁判上の和解が成立したにもかかわらず、相手方がお金を支払ってくれなかったり、明渡し(建物明渡訴訟の場合など)をしてくれなかったりする場合に、債務名義を得た債権者の申立てに基づいて、債務者に対する請求を、裁判所が強制的に実現する手続です。債務名義とは、確定判決、和解調書、調停調書などのことで、強制執行手続に必要な書類です。
強制執行には、大きく分けて、不動産執行、動産執行、債権執行の3種類がありますが、一般にもっとも利用されるのは、債権執行です。債権執行のメインは相手方の銀行預金の差押えです。銀行預金を差押えれば、回収すべき金額の範囲内である限り、差押え時の預金残高をそのまま回収することができます。
また、相手方が売掛金などの債権を有している場合には、その債権を差し押えることもできます。