夫婦の間に子供がいる場合で、その子供が未成年の場合には、離婚する際には、必ず親権者を父母のどちらにするのかを決めなければなりません。親権者の指定をしなければ離婚することができません。親権者をどちらにするのかで合意に至らない場合には、調停など、裁判所を通じた手続によって定めることになります。
親権者を父母のどちらにするかは、子供の意思(15歳以上の場合)、父母の生活状況、子供に対する愛情の度合い等の要素を考慮して、子供にとって、どちらが親権者となるのが子の利益になるかという観点から、定められることになります。通常は、母より父の方が収入が高いことが多いでしょうが、母が親権者になることが多く、その場合の経済的な問題は養育費で解決することになります。
一昔前には父親を親権者、母親を監護権者とするケースが多かったのですが、最近では、親権者として様々な事柄を決める際に、別れた夫に決定してもらわなくてはならないことの煩雑さを敬遠する等の理由から、親権者・監護権者とも、特に乳幼児については母親とするケースが圧倒的に多くなっています。
離婚時に親権を決めても、子の利益にならないと認められた場合、厳しい要件のもと、親権の変更が可能な場合があります。手続としては、現在、親権を持っている相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、あるいは双方が合意した家庭裁判所に、親権変更の申立てを行います。
なお、親権を濫用して子供を虐待するケースが増える傾向にあることから、民法が改正され、平成24年4月から、「親権停止制度」が施行され、必ずしも「親権濫用」や「著しい不行跡」を必須の要素とせず、家庭裁判所は2年を超えない範囲内で親権停止の審判ができることとなりました。また、請求権者には、子供本人が加えられることとなりました。
従来の親権喪失制度よりも、要件が緩和されていることから、今後は、この制度を利用して、虐待親の接近・連戻し防止だけでなく、未成年後見人を選任して、後見人がアパートの賃借、雇用契約、携帯電話の購入、進学等の際には子の利益に沿って適切に関わることにより、子供の自立支援がより促進されるよう期待されています。
たとえば、妻(母親)が親権者となったとしても、夫(父親)には当然に子供に会う権利があります。これを面接交渉権といいます。面接交渉の内容については、決まった取決めがあるわけではなく、当事者が自由に決めることができます。ただし、親の視点からというよりも、子供の成長のことを考えた取決めをすることが重要です。合意に至らない場合には、調停など、裁判所を通じた手続によって、子の福祉の観点から、話合いを進めることになります。子供に会いたいばかりに、子供を無理矢理連れ戻すと、場合によっては刑事責任を追及される可能性もありますので、冷静な対応が必要です。
離婚の話合いがこじれたまま妻が子供を連れて実家へ帰ってしまっている場合や、妻が夫に子供を会わせないようにしているといった場合は、離婚成立の前後を問わず、夫は家庭裁判所に面接交渉の申立てをすることができます。ただし、会うことで子供に悪影響があるような場合には、権利はあっても面接交渉権が制限されます。
親権者にならなかった方の親に、子供を会わせないようにすることは、原則としてできません。子供に対する面接交渉権は、明文の規定はありませんが、親として当然に持っている権利で、子供に会うことまで拒否することはできないと考えられています。しかし、面会することで、子供に悪影響が出るような場合には、ある年齢に達するまでの面接を禁止したり、親権者同伴の場で会うなど、面接交渉を制限・停止したりすることが認められる場合もあります。また、子供の面接の際に復縁を迫ったり、金銭の無心を言ったりするような場合や、勝手に子供と会ったり、子供を連れ去ろうとしたりする場合は、面接交渉権の制限や停止を家庭裁判所に申し立てることができます。
面接交渉を拒否された場合や、条件に納得できない場合、家庭裁判所へ面接交渉の調停申立てをすることができます。調停が不成立であれば、手続は移行して審判になります。